研究課題
本研究は、後期イスラーム神秘主義を、スンナ派とシーア派、および思想と運動という二つの参照軸を用いつつ検討することを課題としている。その2年目にあたる本年度は、東長、鎌田が各々の個別研究を拡張するとともに、3年目の比較に向けての共通の土台を形成することにつとめた。東長はボスネヴィーの写本に関する情報収集に引き続きあたるとともに、それらをオスマン帝国の思想状況および神秘主義教団の活動の中に位置付ける作業に従事した。具体的には、2005年5月にオクスフォードで開催されたMuhyiddin Ibn Arabi Societyの第22回年次大会に発表者として招待され、フルペーパーを読み上げたが、この発表によって、同学会の名誉会員(honorary fellow)に選ばれた。また、日本オリエント学会第47回大会(2005年10月30日)において「オスマン帝国期のスーフィズム-ボスネヴィーを中心として」と題する研究発表を行い、研究成果の一端を公表した。他方鎌田は、モッラー・サドラーについて個別研究を進展させるとともに、サファヴィー朝というシーア派国家の思想・活動状況の中において考察した。具体的には、モッラー・サドラーのクルアーン注釈を取り上げて、シーア派思想・哲学・神秘主義の混交を分析するとともに、モッラー・サドラーの弟子であるファイド・カーシャーニーの聖者論を取り上げて、シーア派のイマーム論と神秘主義の聖者論の交錯する様を検討し、考察の射程を広げた。共通討議の過程では、オスマン帝国ではイスラーム神秘主義の思想も教団の運動もともに主流にあったのに対し、サファヴィー朝では思想のみが主流にあり、教団の運動は弾圧されてきたという大きな違いを浮き彫りにすることができた。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
Annals of the Japan Association for Middle East Studies 21・2
ページ: 7-22
創文 2005年10月号
ページ: 11-14
Twenty-second annual symposium of The Muhyiddin ibn 'Arabi Sopciety, "Time and Non-time"におけるフルペーパー
ページ: 1-19
International Journal of Asian Studies 2・2
ページ: 275-289
宗教研究 79・2(345)
ページ: 1-18
Reason and Inspiration in Islam : Theology, Philosophy and Mysticism in Muslim Thought : Essays in Honour of Hermann Landolt (I.B.Tauris)
ページ: 455-468