台湾先住民族運動は、21世紀になりそれまで9族で固定化されていた民族分類の境界を再編している。つまり、21世紀になりサオ族、クヴァラン族、タロコ族が新たに加えられた。そしてさらに本年2007年1月にサキザや族が認定された。 1 タロコ族認定に関して、セデック語を話す3系統のグループのなかで、キリスト教長老教会の指導者たちが、長老教会の組織や言語のローマ字化を基盤として、各々のアイデンティティを作り上げていく活動をおこなっていた。そうした活動のひとつに、長老教会の牧師たちも中心的に加わって日本植民地時代の文献や伝承等から、自らの歴史を新たなアイデンティティをもとに再構築していく過程がみられた。先住民族たちの歴史の構築と意識化について考察した。 2 アミ族の民族的宗教の実践者たちは、集落の者がキリスト教に改宗していくなか、表面キリスト教徒になりながらも自らの民族的宗教意識を強固にしていく過程がみられた。これはキリスト教だけではなく、台湾で多数派をしめる漢族の宗教に関しても異民族神の侵入により、従来の民族神信仰の境界を確認する意識がみられた。 3 サキザヤ族の認定のニュースは、台湾のメディアだけではなく、英字新聞、中国語新聞など新聞社のホームページ等を通じて世界に報道された。また、個人や地域的な活動組織でもインターネットを使って、自分たちの活動の記録を記しているのがみられた。認定以前、サキザヤはアミ族に分類されていたが、「サキザヤ族」アイデンティティがインターネットを通じて、世界に向けて発信された。今後もインターネットのかかわりに注目してみたい。 今まさに民族的アイデンティティが再編されている台湾社会の調査をとおして、エスニック・アイデンティティの意識形成と宗教の介入について考察した。
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