今回、助成を受けたプロジェクトは、関西を中心としたフロイトの学際的な研究の一環として、フロイトの作品をすべて電子テクストとしてデータベース化するというものである。これによって、フロイトの用語法の解明や、個々の用語の成立時期の特定、用法の時間的推移の確認などが容易となり、また、計画中の新しいフロイト翻訳に検討している、ドイツ語原文・日本語訳にまたがる総索引の作成のための基礎資料として用いることを予定している。二年間の計画の初年度に当たる今年度は、当初、ドイツ語原文をすべて電子テクスト化し、そこに、現在、主として用いられる三種類のドイツ語原文の全集、選集のページ付けを付する作業に加え、全作品に段落番号を付すること、さらに既存の英訳テクストファイルに、ドイツ語テクストと共通の段落番号を付加することを予定していた。現実に作業を行なってみると、ドイツ語原文の電子テクストの作成と、そのテクストにドイツ語各版のページ付けを付していく作業はおおむね順調に推移し、予定していた作業はほぼ終了した。また、この作業の中で、いくつかの版相互の異同や誤植などを発見できた。しかし段落番号を付加する作業は版ごとの体裁の相違などから、ある程度、経験をつんだ読み手の判断が必要で、作業を学生のアルバイトのみに頼ることができず、思いのほか時間と労力を要した。だいたい完了したものの、これについてはなお確定を要する。また、これが確定しないため、予定していた英語テクストへの段落番号付与は見合わされた。英訳版への段落番号の付与については、今後、予定されるドイツ語版の番号の変動や修正を考えると、今回、助成を受けている作業からは、ひとまず除外することが適当であると考える。次年度に継続して補助金が交付された場合、本年度に作品ごとに個別に作成したドイツ語電子テクストを利用者の便利なように、全集版に準拠して再度組みなおし、索引作成に道を開いておくこと、さらには個々の用語が既存の日本語訳でどのように訳されているかについて、用例集の作成を進めることを検討している。なお、作成されたファイルは、すでに研究会での共同討議に積極的に利用されている。
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