高田珠樹 フロイトの学際的研究に向けた電子テクストの作成 今回、研究助成を受けて実施したのは、従来から関西を中心に継続されてきたフロイトの学際的な研究と、それに基づく新しい翻訳全集の刊行のために、その基盤として、フロイトの著作をすべてドイツ語原文のまま電子テクストとしてデータベース化するというプロジェクトである。この目的は助成を受けた2年間の作業によっておおむね完了した。ドイツ語テクストの正確な再現に多少ミスが含まれることが予想され、また、底本として用いた複数の全集や選集のあいだの異同については、一部行なわれたにすぎないが、この是正は今後、長期的な課題としたい。現在、並行して作業を進めている新訳フロイト全集の編集と刊行、さらにその後に予定している詳細な索引の作成と刊行などのための基盤作りという目的には十分な成果を得たと考えている。 データ作りは、個々の作品ごとに行なわれ、活字の鮮明さを勘案し、まず1990年代以後に刊行されたフロイト選集を優先的に底本とし、そこに入っていないものについては70年代の選集、いずれにも収められていないものについては50年代の全集をベースに電子データ化の作業を行なった。1年目の作業でこれは終了し、2年目の作業では、一旦個別のデータであったものを、あらためて50年代の全集の順序に基づいて整理しなおし、全集の巻数に対応したファイルとして完成させた。各作品ごとに段落番号を付し、3つの版のすべてについて、ファイルにページ番号を挿入し、今後の索引作成や校合作業に備えてある。 未完成な情態のうちからファイルを用いて、新フロイト翻訳全集の作業が進められ、具体的な用例に基づく統一した訳語表の作成や、編集会議での訳文とドイツ語原文との照合や検討に威力を発揮した。全集は、本年秋から刊行を開始し、研究代表者(高田珠樹)が単独で編集と翻訳を担当した第7巻は、本年11月の第2回配本として刊行される予定である。
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