本年度は本研究最終年度として、近代の「知」として「日本哲学史」「日本思想史」が、いかに「学」として社会内に自立し得たか、そこにはどんな課題が内包されていたかを、シンポジウム「明治の哲学」で報告すると共に、その成果を論文として公表した。 また、4年間にわたる研究成果を、(1)「日本思想史学」が「国民」形成史を語る「学知」として形成された経緯、及びその成立に関わる「日本」と「アジア」の関係、(2)近代日本における「哲学史」と「思想史」の相関的成立の過程、(3)東アジアにおける「思想史学」の今後の可能性、の三課題を軸に、150頁の研究報告書を作成した。内容はI部では、近代日本における哲学史、思想史の成立を、井上哲次郎から戦後日本思想史学の展開までを含めて考察し、II部では、明治20年代の「国民」を語る言説とアジア論の言説の相関する展開の様相を、福澤諭吉、岡倉天心、樽井藤吉らの議論を題材にして鮮明化させ、かつ、現代中国における「アジア論」への視点(孫歌氏らの議論)にも考察を加えた。III部では、「近代の学知」の一つとして、国民文化を語るものとして機能した「国語学」(そして「国語教育」「日本語教育」を取り上げ、それを思想史的問題として議論した。 以上の三部構成により、本研究の総括を行い、今後の展望を示した。
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