(1)論文「日本環境思想史の構想」(2004)を踏まえ、前年度に引き続き、日本環境思想史の課題と方法について研究を進め、その成果の一端を「日本環境思想史と南方熊楠」と題して日本思想史学会2005年度大会(10・30、東京大学教養学部)で口頭発表した。さらにその際の質疑を踏まえ、論文「日本環境思想史の構想・再論」をまとめ、『井上義彦教授退官記念論集』(2006、中華書局)に収載した。同論文では、日本環境思想史を大きく3期に時代区分するとともに、それぞれの時期の研究課題を明確にした。特に第2期の徳川日本及び第3期の近代日本の環境思想史研究の課題を具体的に示すとともに、個別研究の試みとして徳川日本における「天」「天地」をめぐる思想の特質について考察した。 (2)「日本環境思想史の構想・再論」における考察を踏まえ、本格的な環境思想史研究の具体化として「「天地」と人間-徳川日本の環境思想の特質-」を執筆し、日本思想史学会『日本思想史学』に投稿した。同論文は、日本環境思想史の課題を明確化し、日本環境思想史研究の意義を提起するとともに、朱子学者貝原益軒の天地と人をめぐる思想を中心に徳川思想を環境思想史の視角から考察し、その環境思想史上の意義を明らかにしたものである。同論文では儒教(朱子学)の環境思想にも関説したが、さらに儒教の環境思想に関する考察は「環境思想としての儒教」にまとめられた。同論文は『孟子』『筍子』『礼記』等の儒教テクストにおける自然資源の適切な利用と環境保全の意識を指摘するとともに、『孟子』『中庸』「西銘」(張載)及びそれらに対する朱子の注を素材として儒教の天地-人関係を環境思想史の視角から考察したものである。「環境思想としての儒教」は、招聘された淡江大学(台湾)において2006年5月に講演する予定である。
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