本年度は当該研究課題の解明に必要不可欠な資料の所在調査を集中的に行ない、相当数の関連資料を全国各地から入手することができた。購入することができたものも多い。具体的には、江戸時代に刊行された数種類の御籤本、および御籤箱である。これらについての調査研究も同時に行ない、それらの位置づけについても、ほぼ確定することができた。また、その中でも基盤となり得ると考えられる資料については翻刻作業をし、内容の詳細な解明も進めている。これらのことに関しては、次年度も継続して進めてゆく予定である。 また、口頭での研究発表としては、東海市・男女共同参画セミナーにおいて、2日間にわたり「江戸時代の虚と実-おみくじから垣間見た近世社会-」「江戸時代の本音と建前-占いに映し出された近世社会-」と題する発表を行なった。さらに江戸町人研究会においては「占いとジェンダー〜おみくじの視点から〜」と題する発表も行なった。 また、実地踏査あるいは聞き取り調査としては、長野県上田市の北向観音、神奈川県横浜市の関帝廟、横浜中華街などで実施した。特に北向観音では、江戸時代以来の御籤の占法が今なお伝わっていることを発見するに至り、そこに至る経総について、北向観音および常楽寺の住職であり、天台宗の探題でもある半田孝淳師より直接、今日に至るまでの北向観音における元三大師御籤の来歴について詳細な聞き取り調査を実施することができ、研究代表者のこれまでの仮説を裏づけることができた。 論文等の発表に関しては、「おみくじと侍-元三大師御籤の受容層に関する一考察-」と題するものを『江戸町人の研究・第6巻』(西山松之助編、吉川弘文館刊)の中で発表した。さらには今回の基盤研究Cに先立つ基盤研究C(課題番号12610045)(平成12年〜15年)と今回の基盤研究Cとの橋渡しとすべく、平成16年度以降に獲得した知見をも累加した前回の基盤研究Cの研究実績報告書の増訂版を刊行(自費出版)した。
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