上記の研究課題について、丸山については毎年彼の命日に行われる集会等に参加して丸山研究者と研究交流に努めるとともに、東京女子大学附属図書館にある丸山文庫で調査を行った。また、『丸山真男集』や『丸山真男講義録』の編集に携わった松沢弘陽氏に会って研究上の疑問点についてお尋ねし貴重な教示を得ることができた。本研究は、レーヴィットと丸山の近代観の相違についてのこれまでの研究に基づいて、二人の歴史観、人生観、世界観などを究明していくことを課題としているが、レーヴィットについては18年度は彼の著書と研究論文の読解を通して彼の考えの理解を深めていくように努めた。丸山については研究交流などで得られた知見に基づいて「ニヒリズムと政治的ラディカリズム-丸山真男の生の哲学序説-」(『現揚としての政治学』日本経済評論社2007年3月刊)を書いた。この論文は、レーヴィットの精神史研究に基づいて、キリスト教的世界観が衰退した後20世紀にマルクスによって代表される政治的ラディカリズムとニーチェによって代表されるニヒリズムが広がっていき、極めて不安定な精神状況が現れたなかでそれとは異なる人生観・世界観を形成した思想家として丸山を位置づけ、彼のその独自な思想を解明しようとした試みである。この論文で明らかにされた点と3年間の研究活動の成果を踏まえて、レーヴィットと丸山の近代観、政治観、学問観、そして特に歴史観、人生観、世界観の相違とその相違の思想的な意味を明らかにする総括的な研究論文をまとめている。
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