平成16年度は主としてレーヴィットの研究に重点を置いて、ハイデルベルクを中心にドイツで資料収集と研究動向の把握に努めた。また日本ではレーヴィットが戦前在職していた東北大学に行って資料収集を行った。平成17年度も引き続きドイツでレーヴィット研究の動向を把握するように努めるとともに、東京女子大学の丸山文庫などで丸山関連の文献の閲覧収集に努めるとともに、丸山研究者との研究交流を行った。平成18年度は引き続き丸山研究者との研究交流に努めると同時に、「ニヒリズムと政治的ラディカリズムとの間--丸山真男の生の哲学序説」と題する論文を『現場としての政治学』(日本経済評論社2007年3月刊)に収めるために執筆するとともに、3年間の研究成果報告書として「カール・レーヴィットと丸山真男の比較思想史的研究」を執筆した。報告者は、レーヴィットと丸山が20世紀において卓越した批判精神の所有者という共通性を持つにもかかわらず近代観や歴史観や人生観において本質的に異なる態度や見方を抱いていたことに着目し、二人の見方の相違を明らかにするとともに、その理由を究明しようとした。また「ニヒリズムと政治的ラディカリズム--丸山真男の生の哲学序説--」においては、丸山がその批判精神にもかかわらずなぜ人生に対して肯定的な態度を取ることができたかを明らかにしようと試みた。この論文においては、レーヴィットの精神史研究の見方に基づいて20世紀をニヒリズムと政治的ラディカリズムの時代と規定した上で、丸山が明晰で知的に誠実な態度を学問や政治や人生の見方に貫きながらそれにもかかわらず、その独自の学問観や政治観や人生観によってニヒリズムにも政治的ラディカリズムにも陥ることなく、人生に対して肯定的で積極的な態度を持ち続けることがどうして可能であったかを究明した。
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