研究課題
本研究では、16世紀から19世紀の中国や日本で多数制作された女性像、所謂「唐美人図」・「仕女図」という視覚的イメージの実態を把握し、それらの歴史的役割や社会的機能を考察している。特に中国明代後半以降に大量に作られ、日本に数多く入ってきた仇英等の贋作類(作品のみでなく狩野派などの模本や探幽縮図等も含めて)を、中国の仕女図や日本の唐美人図の全体像の復元的な把握に積極的に取り入れた点にも特色がある。中国の仕女図に関しては、描写技法・形態感覚・時代風俗などの諸点の分析に加え、女性像に投影されたその時代の価値観について考察するとともに、明代以降の仕女図が東アジア文化圏にどのように伝播して行くか、また異なった社会に伝わって行く際にいかに理解されたか、あるいはいかに理解されずに変質して行くか、という点も考察を及ぼしている。日本の桃山から江戸時代の唐美人については、何時、誰が、どのような画面に、何の目的で唐美人図を描いたか、その際どのような中国の美人図が取り入れられているか(図像的典拠)等を具体的に考察しながら、近世日本における唐美人図と唐美人モチーフの歴史的な意味付けを明らかにしている。仕女図・唐美人図に関する先行研究としては、個別的な作品研究や画家研究の一環として行われたものはあるが、伝承作品・模本類・版画・工芸意匠なども含めて、全体像の把握に努めたものはなく、また文物の流通を実証的に検証しながら、日中間を見渡す広い視野に立って考察したものもない。それらはいずれも本研究の独創的な点と確信している。また、16世紀から19世紀前半にかけての唐美人図を網羅的に調査し、主題・作者・制作年代・画題・図像などを分析し、デジタル画像とともにコンピューターに入力し、「画像データベース」を構築した点も有意義な成果と言えよう
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
The Tale of Genji in Japan and the World : Social Imaginary, Media And Cultural Production (Columbia University Press) (所載)
続・美術とジェンダー(ブリュッケ) (所載)