当該研究2年目となる本年度は、(I)現地調査の継続、(II)現地研究者との意見交換、そして(III)画像データ整理の継続に主に従事した。 (I)の現地調査(夏期)では、先ず、パラティーナ図書館(パルマ)、イタリア国立図書館(フィレンツェ)、ドイツ国立美術史研究所(フィレンツェ)において、予言者図像研究を中心に資料蒐集を行った。また今年度は、フィデンツァ大聖堂、パルマ洗礼堂、クレモナ大聖堂、ピアチェンツァ大聖堂に加えて、さらにモデナ大聖堂に関する画像データを制作した。 (II)では、G.Tiglerフィレンツェ大学教授およびG.Valenzanoパドヴァ大学教授と意見交換をした。とりわけ、フィデンツァ大聖堂とクレモナ大聖堂の予言者図像の関係について議論をおこなえたことは意義深い。フィデンツァ大聖堂の予言者像はフランス・ゴシックの図像の伝播というよりは、むしろ北イタリア・ロマネスク図像の伝統の中に位置づけられることが確認できたのである。 (III)においては、昨年に引き続き、各画像データに詳細なタイトルを付けてPhoto-Shop形式で保存、そしてCD-Romに焼き付けるという作業を進めた。 なお、昨年入稿していた論文2本(うち1本はイタリアの学術雑誌に掲載)が今年度出版されたことにより、これをもとにより広く現地研究者と意見を交換した。そこにおいては、イタリア中世自治都市国家の祝祭とファサード彫刻図との関連について、改めてその重要性を提起することができた。
|