当該研究3年目(最終年)となる本年度は、(1)画像データ整理(2)研究全体の纏め(3)現地研究者との意見交換・共同現地調査に従事した。(1)については、現地調査で収集した各聖堂彫刻細部写真を、地域、年代、図像、聖堂内での位置(特に中央扉口との関係性)を基準に整理した。当該研究の纏めのみならず、今後の研究、さらに海外研究者との共同作業にとっても重要なデータとなる。(2)昨年度までは、フィデンツァ大聖堂、パルマ洗礼堂、ピアチェンツァ大聖堂、ピアチェンツァのサンタントーニオ聖堂、そしてローディ大聖堂の彫刻図像について、個別に調査を進あてきだが、今年度はそれをふまえた纏めの作業に入った。同時代の「労働」および「原罪」に対する観念との関係、そして、中央扉口の象徴的意味との関連性について、北イタリア・ロマネスク彫刻の特徴を浮かび上がらせることができたのはね特に大きな成果と言える。これについては、6月の日本西洋史学会大会においも発表した。また、キアラヴァッレ・デッラ・ゴオシンバ・シトー会回廊彫刻図像と聖堂参事会室との関連性を明らかにした点は、今後の研究の展開において重要となる。(3)今年度もイタリアの研究者と協議をしながら、研究を進めた。とりわけ、ヴェネツィアのサン・マルコ聖堂およびフェッラーラ大聖堂の正面扉周囲の彫刻図像研究を進めているフィレンツェ大学教授Guido Tigler氏、そして、ヴェローナのサン・ゼノ聖堂正面彫刻図像を調査しているパドヴァ大学教授Giqvanna Valenzano氏との意見交換は有益であった。とりわけ(2)で言及した北イタリア・ロマネスクの図像の特徴について、この二氏と活発な協議を行った。
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