調査の対象とする写本を確定し、それらに関わる文献を収集した。今年度はロンドン(大英図書館)とアテネ(ギリシア国立図書館)で実地調査を行う(3月。研究協力者による調査は4月まで継続)。これまでに調査が終了している写本(ソフィア、ロンドンとパリの一部)については、聖者暦のデータベース化を行った。聖者暦の基準データとしては、パリ国立図書館で代表者が発見したコンスタンティノポリス総主教座本を第一として、アギア・ソフィア大聖堂ティピコン(4写本)、『コンスタンティノポリスのシナクサリオン』を補助的に用いることとし、入手済み写本のデータをこれと比較した。いまだ資料数が十分ではないため、リセンション的な結論には達していないが、いくつかの重要な発見がなされた。 例えばCod.Paris. Coislin gr.31写本は、11/12世紀に首都コンスタンティノポリスのアギア・ディナミス聖堂に捧げられたものであることがわかった。これによって中期ビザンティン時代に活動が知られていなかった重要な聖堂アギア・ディナミスの実態の一部が明らかとなった。 挿絵入りレクショナリーとして重要なヴェネツィア本、ヴァティカン本、ピアポント・モーガン本(Cod.M639)に関しても、研究協力者とともにテキストと挿絵の関係を分析した。挿絵のプログラムにパトロンの意図を読み取れるかどうかについては、確定的な結論に達していないが、今後も引き続き他写本と比較しながら考察してゆきたい。
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