平成16年度の研究において得られた新知見はだいたい次の通りである。 1、日本 (1)仏伝図→静岡・MOA美術館所蔵の釈迦八相図の調査を行い、仏伝涅槃図の左右辺を切断して表装を施した作品であることを確認した。この調査により、仏伝涅槃図における仏伝図の特色を明らかにすることが可能となり、発表を行う予定である。 (2)涅槃図→京都・興聖寺所蔵涅槃図及び岡山・遍明院蔵涅槃変相図の調査を行い、興聖寺本が愛知・法海寺本、山口・周防国分寺本などと共通した定型表現の一つであることを確認した。これも発表を行う予定である。 (3)その他→展示品の調査であるが、釈迦三尊像や春日曼茶羅・熊野曼茶羅、善光寺如来絵伝などにおける釈迦の表現を確認した。特に熊野曼茶羅においては思想的背景を見いだすことが課題となる。 2、中国 (1)敦煌石窟→敦煌の莫高窟、安西の楡林窟・東千仏洞における壁画の調査をおこなった。特に莫高窟第112窟、東千仏洞第2・5・7窟涅槃図の調査が実現したことが大きな成果といえる。 (2)単独彫像など→中国・薬王山石窟や東京国立博物館で行われた中国国宝展などにおいて、中国の単独彫像や舎利容器に表された仏伝表現を確認することができた。 以上、中国の仏伝図と涅槃図については、中国国内での中央との図像的関連を明らかにし、次いで日本の仏伝図・涅槃図と比較研究することが重要であることを痛感した。資料が整い次第順次発表していく予定である。
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