研究課題
基盤研究(C)
本研究では、明治期の文壇において、西洋の文学作品を移入し、その解釈・分析をめぐる方法そのものを受容することによって、<批評>意識がどのように覚醒され、その概念規定がなされていったのか-とくに、ドイツ思想・美学の受容は、近代日本の知識人による<批評>概念形成のうえで、どのような意義を有していたのか、という課題について明らかにすることをめざした。具体的には、イギリス・フランスを中心に、その<批評>概念の形成過程をたどり、ドイツの<批評>概念を位置づけた上で、近代以前の日本における<批評>意識の諸相、明治文学における<批評>概念の成立に関わる研究を進めることを試みた。その結果、明治20年代の大西祝以降、あるべき文学を模索し志向した坪内章逍遥、森鴎外、高山樗牛、島村抱月ら、当時の文学者たちの旺盛な<批評>活動をとおして、明治末期には定着した概念として<批評>が用いられるようになったことを確認。さらに、大西祝「批評論」において、近代日本における西洋思想の移入にともなう混迷した時代精神の状況に対して、中国思想・インド思想・西洋思想を批評し、その営為をとおして新たな日本思想を構築することが提唱されていることを考察した。大西の言う<批評>の基本とは、創作者の立場に立って考察し、その上でカント的な理性による評価をすることであり、<批評>の方法の認識という発想にこそ、大西の<批評>論が、カントの認識論Kritikから深く影響を受けていたことが表れている。ちなみに、19世紀のイギリス・フランスにおける<批評>概念の成立に、感情移入の<批評>を誇るドイツ美学が多大の影響を及ぼしたように、日本近代文学における<批評>のジャンル意識の成熟や定義づけにも、ドイツ美学が重要な役割を果たしたことを研究課題としたが、このテーマについてはじゅうぶんな成果を挙げることができなかった。今後の研究課題としたい。
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鴎外 80号
ページ: 110-126
国文論叢 第37号(発行予定)
Ogai Vol.80
Collection of Essays about Japanese Literature Vol.37 (in press)
國文学 第50巻2号
ページ: 132-137
國文学 第50巻9号
ページ: 95-106
岐阜大学国語国文学 第32号
ページ: 13-47
Japanese Literature Vol.50 No.2
Japanese Literature Vol.50 No.9
Bulletin of the Japanese Literature and Language, Gifu University Vol.32
岐阜大学国語国文学 第31号
ページ: 1-24
Bulletin of the Japanese Literature and Language, Gifu University Vol.31