平成16年度〜平成18年度研究期間中の研究成果の概要は以下のとおりである。 (1)平成12〜14年度科学研究費の交付を受けた研究課題「女訓書の研究」の成果である『女訓抄』(平成15年・三弥井書店)を手掛かりとして、中世期における女訓書創造の営みがどのような思想的背景のもとになされたかについて考察し、その内容を論文化した。 (2)『月庵酔醒記』輪読会において、同書所載の「仮名教訓」の諸本調査およびその内容の検討を行い、女訓に留まらない室町末期の教訓と教養のありかたを明らかにし、論文化した。 (3)中古から中世に至る物語に描かれた「世の中」を教育という観点から考え、女訓書を読むことの意味について口頭発表を行った。 (4)平成19年4月、「中世の文学」の一冊として『月庵酔醒記(上)』を三弥井書店より刊行。 足利晴氏・義氏に仕え、古河公方の重臣であった戦国武将、一色直朝(月庵)が記した雑話集『月庵酔醒記』の注釈作業に関して、担当箇所の校訂本文の作成および、頭注・補注を執筆した。具体的には、『月庵酔醒記』上巻の佐藤嗣信に関する挿話と、節用集的内容である「須弥四州名」から「人歳之名」までの46項目である。なお現在、続く中巻の原稿作成中である。 (5)平成21年度刊行予定『伝承文学全注釈叢書女訓抄』(三弥井書店)の注釈作業。 平成18年11月より、『大東急記念文庫善本叢刊』所収の寛永16年古活字版を底本とし、穂国文庫本・寛永19年整版本・大阪女子大学写本との校合のもと校訂本文を作成。「本文」「注釈」「補注」からなる全注釈形式にて、「序」「第一 四倒八苦」の原稿を執筆し、現在「第二 五障三従の事」の原稿を作成中である。
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