偽書の近世期における生成、展開について、「清少納言松島日記」の場合を検討した。前年までに検討した「紫日記」(紫式部の日記という偽書)において、連歌師の関与が見られたが、今回は俳諧師の関与が予想される結果となった。 新たなジャンルの生成と従来とはことなる階層の関与によって、偽書が生み出されていく構造が見えてきたと考えている。 海外との関連については、11月にソウル外国語大学で開催された国際シンポジウム「東アジアの日本文学研究」に参加(第二セクション司会)し、韓国、中国、ベトナムからの参加者と「偽書概念」のすり合わせを行ったが、期待したような成果は得られなかった(この渡航、滞在費については年度初めに本科研での支出を予定しておらず、予算計上していなかったため、科研費用は使っていない)。 韓国における偽書研究の資料の収集はできたので、これらを使って、さらに系統的な調査・追及が必要と考えている。
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