本研究の最終年度である今年度は、三都個別の編年体町触集成である『江戸町触集成』、『京都町触集成』、『大阪市史』「御触及び口達」から出版関係町触をピックアップする作業を完了、また、ピックアップした町触をパーソナル・コンピュータに入力する作業も完了し、江戸・京都・大阪で発令された町触をそれぞれ上中下の三段に配して、発令年月日順に配列した、三都の出版関係町触対照表「江戸時代三都本屋・出版物関係町触一覧」を完成させた。これによって、三都の出版関係町触とその異同を一同に見渡すことが可能となった。この表では、三都で同一の町触が発令された場合には上中下段に町触が並ぶことになり、また、ある町触が一都市でしか発令されていない場合、他の二都市の段は空欄のままになっている。これによって、ある町触が三都で発令されたものか、一都市のみで発令されたものかが一目瞭然である。そして、結果としてこの表は非常に空欄が目立つ表となった。これによって、先行研究の見方とは異なり、出版関係町触が一部の例外を除いて三都の町奉行所からそれぞれ別個に発令されていたことは明らかである。しかしながら、三都の出版関係町触の異なりばかりを強調するわけにはいかない。特に享保の改革時に、三都に共通して触れられた本屋仲間の整備を前提とする出版条令は、その後も再三にわたって再確認されて幕末に至る。出版法制の大綱が享保改革時に決定づけられたとする従来の見方は正しい。しかしながら、その大綱下において、あるいは、その大綱以外の部面において、三都の町政がそれぞれ独自の動きを見せていることもまた確かなことなのである。あるいはまた、三都共通の触が発令される享保より前、三都の出版関係町触が、それぞれに独自の動きを見せていることも確実である。三都出版関係町触の異同と出版状況の相関に関する精細な研究が今後の課題である。
|