平成17年度は、次の研究を行った。先ず、調査研究旅費を使っての、国の内外の伝本調査である。国内で調査した主な機関は、慶応大学・立教大学・国文学研究資料館・国立国会図書館・静嘉堂文庫・公文教育研究所等である。中でも、立教大学・静嘉堂文庫・公文教育研究所では、中世小説『七夕』の伝本について、本文と挿絵の両面で、新たな調査が出来て、挿絵もカラー写真や、デジカメの電子映像の形で、入手することが出来、今後、挿絵と本文の関係を考察する上で、大きな成果があった。他にも、岩屋物語・十二類絵巻等多くの作品の本文・挿絵草章子と奈良絵本」に関するシンポジウムでのパネラー発表を基に、『国文学解釈と教材の研究』に、「動物説話と異類物」について、拙論を発表した。海外の調査では、台湾大学図書館に所蔵される古典籍の調査を行うことが出来た。中世小説は十数点であったが、『たむら』の絵巻が優品であることが改めて確認されたし、『周防の内侍』等中世小説に入れた方が良いと思われる作品についても調査できて、大いに成果があった。これも、報告書の形で、纏めることが出来た。また、中世小説の研究をさらに発展させるためには、先行研究を十分摂取することが必要なので、今年度は、物品費で、研究図書をかなり多く購入して、今後の研究に役立てることが出来た。また、調査に当たって、自分で撮影が出来たものは自分で撮影したが、個人での撮影を認めていない機関においては、専門の写真家による撮影を依頼しなくてはならず、費用は掛かったが、鮮明で比較考察に大いに役立つ写真等を入手することが出来た。これは、その他の項員の焼付け・引き伸ばし等の経費を充当した。全体として、充実した研究が出来て、非常に成果があった。
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