平成18年度においては、国内外の伝本調査、講演、論文執筆、翻刻と解題等が主な実績である。国内の調査においては、公文教育研究会の所蔵する『七夕』の伝本を閲覧・調査・撮影し、解題を付して翻刻することが出来た。また安城市立博物館でも調査をした。さらに、広島の海の見える杜美術館における奈良絵本・絵巻の国際会議においては、同館が所蔵する多くの美術的価値の高い奈良絵本・絵巻を閲覧でき、資料を収集した。また、参加者が持ち寄った、個人の収集している奈良絵本等に伝本も閲覧し、一部撮影することが出来た。さらに、同館では、奈良絵本・絵巻の国際会議における二人の講演者の一人として、「お伽草子『七夕(天稚彦物語)』の諸問題」の題で、講演を行った。海外については、9月にアメリカのイリノイ州立大学へ出かけ、『蓬莱物語』『熊野の本地』『ものぐさ太郎』『釈迦の本地』『時雨』等の伝本を閲覧し、調査の上、デジタルカメラで撮影を行った。他にも、イリノイ州立大学が所蔵する日本の古典籍のおもなものについて、書誌をとった。また、実物を確認する時間がなかったものについても、カードを閲覧して、所蔵作品について確認することが出来た。なお、公文教育研究会の所蔵する『七夕』の伝本については、許可を得て、紀要に解題を付けた上で、翻刻できた。さらに、海の見える杜美術館で行った講演についても、細部を訂正の上、『奈良絵本・絵巻研究』という雑誌に掲載できた。他にも、中世小説『七夕』(大蛇怪婚系)の諸伝本の校合を行い、校本を作成する作業も行え、総じて、大きな成果があった。
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