平成19年度は、次の研究を行った。第一に、調査研究旅費を使っての、内外の大学・図書館等を巡っての伝本調査と撮影、複製作成依頼、並びに関連資料の収集である。主なものは、次の通りである。国内では、広島大学が所蔵する絵巻・奈良絵本等の原本を閲覧し、撮影を行った。また、岩瀬文庫でも、原本を閲覧し、複製を依頼した。海外では、スウェーデンの東方博物館で、中世小説の版本を多数閲覧・調査し、一部許可得た部分を撮影した。イタリアでは、ローマ国立中央図書館の所蔵する古典籍の調査を行い、重要なものについて、電子版での複製作成を依頼した。また、ローマの日本文化会館において開催された第18回日本資料専門家欧州協会年次総会に参加し、「中世小説『七夕』の本文と挿絵について」という題名で研究発表を行った。この会に参加することにより、ヨーロッパで日本資料を研究している多くの研究者と知りあいになれた結果、ヨーロッパの大学・図書館・美術館・博物館等に所蔵されている中世小説の伝本の所在などについて、多くの知見を得ることができ、大いに成果が上がった。なお、この発表をもとに、「中世小説(お伽草子)『七夕(天稚彦物語)の、蟻による米運搬の場面における挿絵と本文の関係に関する一考察』の題名で論文を発表した。さらに、4年間の成果をまとめて、中世小説の本文と挿絵について、新たな見方を論考にし、また、御伽草子と仮名草子の関係についても言及し、研究成果報告書としてまとめた。
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