平成21年度は、斎宮歴史博物館所蔵の文学関係資料のうち、これまでに資料を閲覧して撮影した画像と博物館側からお借りできた画像により、「源氏物語図色紙貼交屏風」を中心に、伊勢物語絵巻および三十六歌仙図関係資料の研究・分析を行った。 「源氏物語図色紙貼交屏風」に関しては、詞書は翻字を行ってその校異を調べた。すでに公表された翻刻が存在するが、間違いが少々見られるようなので、それの訂正が可能になった。 色紙絵については、描かれている場面の認定をし、他の土佐派の源氏絵(土佐光吉画の京都国立博物館蔵「源氏物語画帖」および同じく光吉画の和泉市久保惣記念美術館蔵「源氏物語手鑑」を中心に)との比較検討を行った。場面の選択や構図は定型化・固定化が顕著であり、場面を認定することは容易なのだが、京博本および久保惣本とは採択場面が必ずしも一致しない。また、同じ場面を似た構図で描いている場合でも、京博本および久保惣本とは異なる点が少なくない上、対応する詞書に書かれる本文は、近い場所の異なる部分を採っている例がまま見られた。 その他でも、絵に採択され描かれている場面と、対になっている詞書の場面が一致しない帖が目に付いた。 以上の研究成果を踏まえ、右隻についての考察を、『東海学院大学短期大学部紀要』第36号に論文として発表した。なお、ページ分量の都合上、左隻については同紀要の次号に掲載予定である。
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