平成17年度研究は、前年と同様に韓国ソウルにある国立中央図書館および釜山市立市民図書館において、植民地期発行の朝鮮教育に関連する和書の蔵書調査を行った。教科書、教科書趣意書、学務官僚講演録などは前年までにおおよそを複写できたため、今年度は京城を発行地とする雑誌を中心に複写を行った。これにより、まだ日本国内では入手できない朝鮮実業協会発行『朝鮮之実業』((明治38年5月〜)や京城朝鮮雑誌社発行『朝鮮』(明治41年3月〜)、朝鮮総督府官房文書課発行『朝鮮』(大正14年10月号〜昭和17年2月号)など、少なくない一次資料雑誌を複写することができた。とくに釜山市立市民図書館(韓国でもっとも古い歴史をもつ)に蔵書されている朝鮮総督府官房文書課『朝鮮』は、植民地期朝鮮の支配動向を朝鮮総督府側の視点で窺うことが出来るものである。大正14年10月号は「朝鮮教育令改正特集号」となっていて、教育行政に携わる学務官僚の思想や教育行政にまつわる背景などを知る上でも貴重な資料だといえる、これら資料と前年までの入手資料を用いて「韓国学部の普通学校制度と「義務教育精神の廃止」について」を『佐賀女子短期大学研究紀要』(2006.3)に掲載し、また日本近代文学として捉えてみる国語常用の朝鮮人作家による日本語文学問題に関連した「明治日本から帝国日本への転位と自画像」を『日本近代文学』(第72集)に掲載した。ちなみに近年、韓国国立中央図書館に所蔵される植民地期の貴重本資料はDB化が進められており、年々蔵書を直接閲覧できないという事態が生じてきている。これに対応するためには、インターネットを利用して国立中央図書館へアクセスし、閲覧ソフトをダウンロードした上で公開されている資料を閲覧することだが、その際に日本語ウインドウズではこの閲覧ソフトを起動させることができないために、残念ながらハングルウィンドウズのPCを必要とする事態となっている。
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