本年度は平成17年度の研究をひきつぎ、資料収集の範囲を拡大すると共に、分析の精度を深めていった。その際、以下の点を特に考慮した。 1.敬虔主義や覚醒運動など、近代各時代の人々が死生観の表明する際の比喩の伝統などを、文体の側面から見直しつつ、そうした伝統形成の背景を培ってきた宗教改革から19世紀に至る範囲の神学論争の内容を検討した。賛美歌集に加えて説教集、祈祷書などにより、無名の人々の日常を規定している修辞的伝統をも検証し、「予型論」を文学共同体の修辞的伝統全体のなかに跡づける作業を行った。 2.詩人と作品の全体像を獲得すべく、その当時の作品集などを参照するための出張調査を11月に行った。今年度は、主としてレーゲンスブルク大学の図書館を訪ねて、讃美歌学関係の資料を収集し、また参照した。 3.この年度は、ドイツにおいて4・5年に一度の間隔をおいて催される「国際ハーマン・コロキウム」が開催された。上の資料収集はその直後の時期でもあったので、参加者のうちでも重要な研究者を訪問し、これまでの成果を伝えてドイツの研究水準に照らした評価を受けた。そのための準備として、今年度前半はこれまでの成果をある程度までまとめることができた。 4.上記のドイツ研究者の内でも特に重要なベルンハルト・ガイェック教授との将来の共同研究を想定してその論文の翻訳作業にも着手した。
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