研究概要 |
本年度の当初の予定は、一方で詳細な分析の対象となる作品を設定するために、17世紀から19世紀にかけてのいくつかの作品を読み解く予定であったが、残念ながら多くの作品に目を向けることはできなかった。手始めに考察し始めたヴォルテールの『カンディード』が、予想を大きく裏切って、汲み尽くしえない内容を持った書物であるように思われたからである。何とかなしえたことは、ヴォルテールの『カンディード』をとにかく精密に読み込むことを通じて、この作品が本研究計画の「歴史的転換の文学的表現」というモチーフに見事に答えるものであることを確認することであった。 より具体的に言えば、本年度の収穫は、『カンディード』第3章の「戦争」にかんするテクストと第1章の全体、ならびに最終章の微視的なテクスト分析をとおして、ひとりの未熟な青年の成長を語るこの物語が一風変わった教養小説であると同時に、神の時代の決定的な後退を画する作品になっていることを明らかにできるのではないかという見通しがついたことである。この作品に関しては、来年度中には、小さな書物のかたちにまとめたいと考えている。 『カンディード』の読解に大きな労力を傾けたために、今年度におこなうことを考えていたもうひとつの作業、すなわちマルク・フュマロリの大著Chateaubriand, poesie et terreurと、ピエール・バルベリスの一連の研究Chateaubriand, une reaction au monde moderne, Rene de Chateaubriand, un nouveau roman, A la recherche dune ecriture, Chateaubriandには、まったく目をとおす余裕がなかった。来年度以降の課題としたい。
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