本年度は、テーマに関連する図書の収集に努め、それらを読み分析することをした。パリ出張をして、ポンピドゥー・センター図書館およびミッテラン国立図書館で資料を閲覧した。ジョセフィーン・ベイカーに関して刊行されている単行本の図書はほぼ集めることが出来たが、関連資料は、必ずしも単行本にはなっておらず、それらの資料の調査・発見は十分に行うことはできなかった。引き続き、課題として調査・発見に努めたい。 アフリカン・アメリカンとヨーロッパ、とりわけパリとのかかわり、文化的相互影響は大きいが、なかでも20世紀前半の交流が、戦後における交流の基盤となっているのであり、そのような大きな展望のもとに20世紀前半を分析する必要がある。アフリカン・アメリカン作家の一人で、やはりヨーロッパとのかかわりを考察する必要のある文学者ラルフ・エリスンを中心にすえ、アフリカン・アメリカンの文学・文化に関して大部の書をまとめた。『アフリカン・アメリカン文学論-「ニグロのイディオム」と想像力』(東大出版会)は、アフリカン・アメリカン文学・文化を特定の限定された「黒人の」領域として捉えるのではなく、広くアメリカ的な文化要素として捉えた、きわめて斬新な姿勢を打ち出した文学・文化論である。
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