研究概要 |
平成17年度は、ポリツィアーノの一次文献、すなわち諸『全集』本等のマイクロフィルムを作成してそれらを相互に校合することとした。そのために、ロンドンのブリティッシュ・ライブラリーとウォーバーグ研究所において調査を実施した(2005年8月28日〜9月12日)。また、それと並行して、ブリティッシュ・ライブラリーからポリツィアーノの各種『全集』本等のマイクロフィルムを入手し、内容を比較検討した。つまり、『雑録』(Miscellanea)のフィレンツェ1489年初版本、『全集』のヴェネツィア1498年版、パリ1512年版、バーゼル1553年版である。ヴェネツィア版『全集』に含まれる「開講演説」(praelectiones)およびそれらに準ずる人文主義・文献学的論考として、Defensiopro Epicteto ad Bartholomeum Scalam, Lamia, Panepistemon, De ira ad Laurentium Medicem, Praefatio in Homerum, Praefatio in Quintilianum et Statii Siluas, Praefatio in Suetonium, Dialectica, Praelectio de dialectica, Praelectio in Persiumの10篇を選択し、またヴェネツィア版『全集』に収録されなかったHistoria de Pactiana coniuratione [=Coniurationis commentarium]についてはバーゼル版『全集』・1479(?)年ローマ版単行書を用いて、それぞれ内容要約を行なう。今後の研究は、ヴェネッィア版『全集』の本文を底本として進める予定だが、以上に列挙した諸異版をも用いることにする。平成17年度の研究によって得られた知見としては、上記「開講演説」等に見られるポリツィアーノの人文主義・文献学の振幅の大きさであろう。残りの年度で、その内容への理解を深めてゆきたい。
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