本研究の目的は、日本におけるブロンテ受容の歴史をたどることにある。ブロンテ姉妹が日本の読者たちにどのように受容されたかを、明治初期の紹介の時代から、昭和初期に邦訳が出版されるまでを、文芸雑誌、学術雑誌、新聞その他の一次資料を基に跡づける。研究の2年目にあたる本年度は以下の3つの計画のうち、2つを遂行した。 1、『女学雑誌』(全526号)の検索。ブロンテ姉妹についての言及は明治20年代に集中しており、それ以降はきわめて少ないことが判明した。むしろ、G・エリオットについての言及の方が多く、今後はブロンテ姉妹だけに限定せず、欧米女性作家を対象とする必要があることを認識した。 2、岡田みつ『Jane Eyre』(研究社英文学叢書)の註釈についての検証。この註釈本は遠藤寿子訳(昭和5年)および十一谷義三郎訳(昭和6年)の全訳への道筋を開いたことが、検証によって明らかになった。また岡田の仕事を見つめ直すことによって、先人の英文学者たちが英文学にどのような姿勢で立ち向かっていたか、明治・大正の英文学者の生き方を浮き彫りにできた。本研究の今後の方向性を見いだせたように思う。なお、この研究成果は『滋賀英文学会論集』第13号に「岡田みつと『Jane Eyre』-研究社英文学叢書について-」にまとめている。 3、明治35年以降に出版された日本における英文学史のなかでのブロンテ姉妹の位置づけを探る。 これについては関連資料の収集に手間取り、詳細な研究には至らなかったので、次年度に引き続いて実施したい。
|