研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、ゾラの小説および美術批評と、同時代の絵画の動向との相関関係を調査・分析することによって、小説家と画家たちが共有した関心はいかなるものであったかを、近代都市パリの歴史的・社会的・文化的な文脈の中で検討することである。本研究の成果は、次の3点にまとめられる。1.アカデミズム絵画とその表層の美学について、『獲物の分け前』における第二帝政期のパリ・モードと女性の身体の問題の視点から考察した。虚飾に満ちた第2帝政期を批判する内容を持つこの小説は、絵画との関連から見て、なめらかな表層と物語主題を追い求めるアカデミズム絵画に対する批判と解釈できる。2.第3共和政成立期の都市パリと新しい絵画の関係について、『パリの胃袋』と都市風景画の問題を、二つの観点から分析した。ひとつは、パリ・コミューンによって多くの建物が廃墟と化した都市パリの再構築と産業化の問題である。鉄とガラスの近代建築の賛美、光を浴びた鮮やかな色彩による都市の装飾は、モネや印象派の絵画と共通する。もう一つは「共和主義」と絵画の問題であり、ゾラの小説と、モネおよびマネによる都市風景画の関連を指摘した。3.商品経済の発達と絵画の関連について、とりわけ近代絵画における物質主義や、商品と女性へ注がれるまなざしの問題を、二つの観点から考察した。ひとつは、『パリの胃袋』における食料品の描写と静物画の問題である。ゾラにおける中央市場の食品の描写とマネの描く静物画には、物質主義的側面が顕著であると同時に、それらの食材や花には商品性が刻印されている。もうひとつは近代商業の象徴としてのショーウインドーの問題である。商店や売り子を扱ったゾラの小説や同時代の絵画には、女性の身体の断片化や商品化が頻繁に見られるが、彼らはまた、近代の商業社会において、自分たちの芸術もまた商品であるという意識をもっていたことが指摘できる。
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