研究課題
基盤研究(C)
日仏の15〜16世紀とは、いずれにおいても、聖と俗の関係性がとりわけ強く人々の意識を捉えた時代であったが、当時の文学や演劇はその表出の一端を担っている。本研究の目的は、フランスと日本の中世末の聖俗をめぐる精神風土のありようを、両国の演劇のなかに個別のテーマを通して総合的に探ることであった。平成16年度と17年度は、両演劇それぞれに、聖・俗の観念に包括的に係わる根本的イメージとして含まれる「風」と「火」というテーマに注目し、これらが聖・俗の視座から見て、いかなる象徴体系を呈しているかを、順次、世俗劇(阿呆劇Sotties、笑劇Farces、滑稽説教Sermons joyeux、悪魔狂言Diableries)、狂言の中に調査した。そして本年度は、以上の調査資料の分析と考察を行い、その結果、いずれにおいても「風」と「火」は聖と俗を切り離す動きを象徴していることが確認された。その上で、研究代表者の平成13〜15年度の科学研究費による先行研究である、仏聖史劇と日本の能における「花」の研究の成果との突き合わせを行い、そこから、聖史劇と能における「花」が聖と俗の関係性の凝縮したかたちであるとすれば、その対応関係にあるいわば喜劇的なジャンルにおける「風」と「火」とは、その関係性の空無化を象徴するイメージを孕むものであるとの解釈を下すに至り、日仏それぞれの中世末演劇において、聖と俗が、融合(「花」により象徴)と離反(「風」と「火」により象徴)の二重の関係にあったことが明らかになった。
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Revue des Sciences Humaines 282
ページ: 41-51
奈良教育大学教育実践総合センター紀要 15
ページ: 53-60
Revue des Sciences Humaines No.282
Bulletin of the Center for Educational Research and Development, Nara University of Education No.15
奈良教育大学紀要 53・1
ページ: 97-106
Bulletin of Nara University of Education Vol. 53, No.1
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