研究概要 |
本研究の目的は、コンピュータを利用し、チョーサー作『カンタベリー物語』(The Canterbury Tales)について、2つの代表的な写本と2つの代表的な刊本を取り上げ、4つのテクストを対応させたコンコーダンスを作成し、Chaucerの言語研究及びtextual criticismに貢献することである。写本は当該作品84写本のうち、最も重要であると考えられる2つの写本、Hengwrt(以下、Hg)写本とEllesmere(以下、El)写本を取り上げた。また現代の代表的な2つの刊本として、Hgに依拠した刊本、N.Blake, ed.(1980) The Canterbury Tales, Edward ArnoldとElに依拠したL.D.Benson, ed.(1987) The Riverside Chaucer, OUPを取り上げた。写本間の校合は、Stubbs (2000)のCD-ROM及びHanna III (1989)とRuggiers (1979)のファクシミリを利用した。 平成16年度においては、The Miller's TaleとThe Reeve's Taleに関して、4つの比較コンコーダンスを完成させた。これはStubbs博士とN.Blake教授の国際的連携の一環として行われた。平成14年度のGeneral Prologueのコンコーダンス(Jimura, Nakao, Matsuo, Blake, and Stubbs (2002))、平成15年度のThe Knight's Taleのコンコーダンス及び両写本のワードペア網羅的リストの作成(Nakao, et al.(2004)を参照)に続くものである。2写本と2刊本の言語特徴を網羅的に検出できたことで、チョーサーの言語の研究を大きく発展させるものと期待できる。
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