研究課題
基盤研究(C)
4年間で数多くのパンフレを収集(フランス国立図書館B.N.)し、同時に、ジャン・クレスパンの『殉教録』やグーラールのプロパガンダ的著作などにB.N.で直接当たることを通して、フランス16世紀後半のパンフレ文学に於ける暴力の表象を広く明らかにできた。プロテスタント側のグーラールやクレスパンらが、『殉教録』を編み、カトリックによる虐殺を執拗にリスト化する過程で、キリストの犠牲の模倣を永遠に引き延ばす危険性に直面したこと、また、両陣営のパンフレの大部分が聖体拝領を巡る論争に費やされているが、その論争が、プロテスタント側のカトリックに対する暴力を扱ったヴェルステガンの『残酷劇場』の中で、腹部の切開という儀礼的暴力の描写と密接な関係を結んでいることも、今回初めて明らかにできた。さらに、レリーやテヴェの旅行記が描く「新大陸」の食尽行為が、西欧的な視線に染め上げられている点も、十分に示し得た。また、ピエール・ド・ランクル『堕天使とデーモンの無節操一覧』も採り上げ、旅行記と魔女論とが交錯する著作の中で、境界(国境)侵犯に対する恐怖心が、魔女を始めとする異質な存在の排除に繋がったことも、2編の論文で論証することができた。以上の比較的マイナーな作家やパンフレと並行して、ルネサンス期のいわゆる大作家の描く暴力についても入念な分析を施した。ラブレー作品の戦争描写が、当時の政治情勢を反映した、フランス王国擁護のプロパガンダとして執筆されていること、ナヴァール王妃の『エプタメロン』に於ける暴力的描写(強姦、近親相姦など)が、福音主義的な信念を極端な形で提示するための「口実」として機能していること、ドービニエの暴力描写の背後には、現世の受難が来世の至福によって贖われるという逆転的構図に支えられていることなどを明らかにできた。以上の成果は、2008年末頃上梓予定の『暴力、その儀式的なるもの-もう-つのルネサンス論』(講談社)でも改めて公表する予定である。
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『王の表象』, 山川出版社
ページ: 227-259
Representation of the Kings(a joint work of 7 authors), Tokyo, Yamakawa-Pub
青山フランス文学論集 第15号
ページ: 37-53
Aoyama French Studies, n° 15
青山フランス文学論集 第14号
ページ: 127-147
Aoyama French Studies, n° 14
青山フランス文学論集 第13号
ページ: 55-114
Aoyama French Studies, n° 13