| 研究概要 |
4年目の最終年として、16世紀末のロンドンの印刷業者Thomas Creedeが印刷したThe Famous Victories of Henry Vを分析書誌学の見地から調査・研究を行い、完成させた。これは、英国のマローン協会(The Malone Society)からの要請により、Malone Society Reprintsシリーズの一冊として同作品を出版するための研究・調査活動の基幹を成すものであった。
この作品の第一・四つ折本(1598年刊、STC13072)および第二・四つ折本(1613年刊、STC13073)に関する先行研究を精査し、オクスフォード大学図書館(the Bodleian Library)に現存する一部(Mal.232(4))と、カリフォルニアのハンティントン図書館に残る一部(12846)について、作者の問題や作品出版に至る経緯、印刷所と出版業者との関係、印刷に使用された原稿の性質、印刷工程、特徴的な植字スタイルやスペリングの違いなどから推測できる植字工の人数、印刷用紙の推測など、本文研究及び書誌学の観点からの議論を完成させた。これらの成果は、MSR版のThe Famous Victories of Henry V,vol.171(Manchester University Press,2007)のIntroductionとして当該研究期間のほぼ最後に発表された。イントロダクションの後の本文には、ハンティントン図書館の古版本のphotographic facsimileが採用され、1598年刊行のオリジナルな写真版テクストを提供している。
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