研究課題
基盤研究(C)
本研究は3つの段階に分けて遂行された。第1の段階は、今日なお社会に大きな影響力をもっており、また哲学や・神学の研究対象としても重要なヨーロッパの神秘思想の研究史と受容史を展望することであった。古代から現代に至るまで神秘思想がヨーロッパの精神史の中でどのような評価を受けてきたのかを知るために、R.オットー、M.エリアーデ、H.v.バーダー、A.ショーペンハウアー、F.ニーチェ、J.グリム、M.ハイデッガー、E.プロッホ、中野孝次らによる神秘思想論を調査した。これにより、この思想が時代を代表する思潮と連動して再評価されることが多いことが明らかとなった。第2段階の考察の重点は、13-14世紀にドイツで活躍し、中世後期の精神史に大きな意味をもっている神秘思想家マイスター・エックハルトにおかれた。調査は、エックハルトが修道士として活動したエルフルト(東部ドイツ)とシュトラースブルク(フランス)の公文書館の資料をもとにおこなわれた。これによって、エックハルトが若い修道士たちに神学的教育をおこなうことと、当時異端運動と関わりのあったべギン修道女の更正という二つの課題を負っていたことが明らかになった。第3段階では女性神秘思想家を調査対象に加えた。これはこの思想形態が、上述の思弁神秘思想に比べ幻視体験に依存することが多く、それゆえ心理学の対象として重要だからである。これらの観点からおこなった調査によって、女性神秘家たちが霊的体験をどのような文学的形姿の中で著述し、彼女たちの自伝ともいえる作品群が歴史的ジェンダー研究の資料となりうるかを証明した。これらによって、ドイツ神秘思想において司牧的・学術的要素が緊密に連動していることが明らかになり、ドイツ神秘思想が中世後期の社会の歴史的利害に成立したことを論証することに成功した。
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大東文化大学紀要 第45号
ページ: 13-25
Daito Bunka Daigaku Kiyo 45
大東文化大学紀要 第44号
ページ: 151-163
Daito Bunka Daigaku Kiyo 44
ドイツにおける神秘思想の展開(日本独文学会研究叢書) 第35号
ページ: 17-34
Die Entwicklung der Mystik und Theosophie im deutschsprachigen Gebiet (Studienreihe der Japanischen Gesellschaft der Germanistik) 35