研究概要 |
17年度の研究会では、O'Neill劇のうち、Beyond the Horizon, Anna Christie, Desire under the Elms, Strange Interlude, Ah Wilderness, Mourning Becomes Electra, Long Days Journey into Nightなどを取り上げて、理解と分析に努めた。その中で、大森研究員は、『地平線の彼方』を取り上げて、メロドラマといわれるこの作品の先進的な側面-メイヨー農場に投影された現代文明の荒廃という視点を付け加えた。 市川研究員は、『楡の木陰の欲望』における"desire"という言葉に注目して、オニールが「欲望」をピューリタン的・否定的に描くのではなく、「自然」と密着した生命力の根源としての「女性的原理」、そして「魂」につながるものであることを指摘した。市川研究員はさらに同じ「欲望」をウィリアムズの「欲望」とも比較検討した。 長田研究員は、すべての会の報告を整理し、修正、統合する役を演じつつ、個別報告としては『喪服の似合うエレクトラ』をとりあげ、この作品がいかにオニールの他の作品-『楡の木陰の欲望』『偉大なる神ブラウン』『奇妙な幕間狂言』とその最も深い部分でつながり、作者の根源的な思想を展開していたこと、それがこの作品で一定の完成を見るにいたっていたことを分析した。その際オニールの根本にある思想こそは、登場人物の成熟の過程をそそままアメリカ文明の蘇生衝動、蘇生渇望として重ねることであった。
|