研究課題
基盤研究(C)
1.長田:『終わりなき日々』論では、オニールの全作品中もっとも異論の多い本作をオニールの思想と哲学の大きな転換点、総括と反省の成果と位置づけ、その転換を語る作者の仕掛けが主人公ジョンの「不倫」衝動であることを明らかにし、作者の総括の根本点が現代人の「理性主義」批判であったことを明らかにした。また、「オニールと女性」では、オニール劇に登場する女性が、写実主義、自然主義に基づく人物造形というよりは、理性主義、父権主義的キリスト教文明の中で救出を必要とされる「情念」の表象としての側面が強いことを指摘し、オニール劇に一貫して流れる「情念の救出」と「情念の浄化」という二つの大きな「物語」があることを明らかにした。2.市川:Desire under the Elms論では、タイトル中の語Desireに注目し、23年後に上演されたウィリアムズのA Streetcar Named DesireにおけるDesireの表象と比較し、両作品に反映されたアメリカ社会の一面を明らかにしようとし、オニールは、当該作品発表当時アメリカで優勢であった父権主義とアメリカン・ドリームから脱却して、「欲望」を手がかりに魂と肉体の新しい出発を試みたことで高く評価されるとした。また、「ユージーン・オニールとアメリカ演劇の成長」においては、遡って、オニール演劇のルーツを思索の実験的展開以外に求める試みを行った。その結果、Long Day's Journey into Nightは、ウィリアムズのThe Glass Menagerieと並ぶ「告白」形式の鎮魂の劇であり、この形式がアメリカの演劇観客の理解力に適合し、エンタテインメントとしてのアメリカ演劇は、一気にストレート・プレイに成長したことを論じた。3.大森:『日陰者に照る月』論では、「母なる豊饒神」の再生を主題とした隠喩的物語の層を明らかにすることで、フェミニスト批評家が作り出してきた、女性を「母親」役に閉じ込める性差別主義者としてのオニール像の解体を試みた。『地平の彼方』論では、現代の「荒地」という文学的トポスをいち早く開拓した作品としてその先進的現代性を論じた。『アナ・クスリティ』論では、イプセン、ワイルド、アンデルセン等の現代人魚ナラティヴ群と比較考察しながら、オニールがエロス的女性像の復権という主題を海と陸の象徴体系の中で追求していることを明らかにした。
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中央大学文学部『紀要』 第100号
ページ: 15-48
人文研ブックレット(中央大学人文科学研究所) 22(印刷中)
西洋比較演劇研究 6
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Journal of the Faculty of letters (Tokyo : Chuo University) NO.215
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Seiyo Hikaku-Engeki Kenkyu [Comparative Theatre Review] 6
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Amerika Engeki [American Drama] 18
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