本研究の目的は、逆ベクトル(イタリアからイギリスへ)のグランドツアーで、イギリスの美意識がどのように当時のヨーロッパ大陸の美意識に影響を及ぼすにいたったかを、アルガロッティという人物を手がかりに、検証することであった。 16年度に開始された本研究は次の3段階に沿ってすすめられてきた。 1.アルガロッティがイギリス滞在で得たもの。(バーリントン伯のサークルとの交流を中心に) 2.アルガロッティがプロイセンに招聘されたのち、イギリスの美意識として彼がフリードリッヒ大王、またその文化サークルに伝えたもの。 3.イギリスの美意識を背景にイタリアに彼がもたらしたもの。(景観、カメラ・オブスクーラの問題など) 18年度は研究の最終年度にあたるため、いままでの研究全般を検証、総括し、成果をまとめる1年間の予定であった。国内外の学会において他の研究者たちとの意見交換を活発に行うことを通して自分の論理の組み立てを補強したいと考えていた。(ただ、家族の病気・介護のため、予定通りに学会等に出席できず、意見交換については当初の予定は達成できずに終わっている。) この点に関しては、後日提出する研究成果報告書をまとめた後(グランドツアーに関する研究はさらに続ける予定なので)今後、意見交換の場を多く持ちたいと考えている。 アルガロッティのイギリス滞在、その後のプロイセン(ポツダム)におけるフリードリッヒ大王との交流に関しては、ほぼ予定通りの検証を行うことができたと考えている。3年間の研究では、イタリアに帰国後(彼が死ぬまで)のアルガロッティの動向について、ピンポイント的な検証に終わっているので、さらにこの点を今後の研究テーマとして継続していきたいと考えている。
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