研究課題
基盤研究(C)
本研究は平成9・10年度に科学研究費・奨励研究(A)を受けて行われた「オーストラリア文学にみる日本人像」、及び平成12・13年度に科学研究費・萌芽的研究を受けて行われた「20世紀オーストラリア文学にみる日本人像」の上に立脚するものである。両研究では元英領植民地でアジア・太平洋地域に位置し、独特の英語圏文化を擁するオーストラリアの文学において、日本及び日本人がどのように表象されてきたか、そしてオーストラリアの国としての成立を背景に、19世紀から太平洋戦争までのその歴史的、政治的、社会的な変化の中で、日豪両国の関係、互いの文化や社会に対する意識や考え方が文学にいかに反映されているかを考察した。両国の最初の直接的関わりともいえる太平洋戦争後、オーストラリアは移民政策の転換により多様な移民を迎えて複合社会を形成し、政策も多文化主義へと方向転換することになった。また戦後の政治、経済、外交関係の推移とともに日豪関係も変化を遂げた。その結果文学に表れる日本人像にも変化が表れる。本研究による成果論文では、1960年代から70年代にかけての多文化主義萌芽期の日本人像、戦後の戦争文学における日本人像、及びアジア-太平洋国家オーストラリアとしてアジアとの関わりを重視した社会背景の中で描かれる日本人像を考察することにより、両国間の関係及び「他者」である日本人の描写の変容を探り、豪社会の多文化化の影響を明らかにした。その結果、戦前の「典型」は残るものの、描く側の作家も、描かれる側の日本人像も多様化し、英語圏文学としての豪文学の多様化に貢献していることが判った。オーストラリアに限らず文学はますます種々の枠組みを越境する性格を帯びるであろう。複合化する豪社会における日本人表象はそれを映し出すひとつの鏡である。戦争その他の契機と社会の変化と文学との相互の影響の分析を、今後文学研究の方法として発展させたい。
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明星大学研究紀要 日本文化学部・言語文化学科 14
ページ: 63-89
オーストラリア研究 18
ページ: 24-28
Bulletin of Meisei University(Department of Japanese and Comparative Culture, School of Japanese Culture)
Journal of Australian Studies
Author's report of the research
ページ: 3-9
Beyond Good and Evil : Essays on the Literature and Culture of the Asia-Pacofoc Region
ページ: 65-78
Beyond Good and Evil : Essays on the Literature and Culture of the Asia-Pacific Region
研究成果報告書