平成16年度科研費補助金「基盤研究(C)(2)」により貴重な図書関係資料を用意することができ、収集したデータを大きく膨らませながら、目的達成のための分析を行うことができた。すなわち、テーマ「中世英国写本と修道院」遂行に当たって、中性にイングランド北部に建てられた修道院の廃墟と、スコットランドとの境界線をなしているツウイード川流域に残る修道院遺跡と跡地を確認し、カルトージオ修道会をはじめとする各会派の活動を文献を活用しながら把握するよう試みた。また、ウルガタの「詩篇」および「時祷書」羊皮紙単葉を入手し、翻刻(transcriptions)を行い、英訳・邦訳を付し、中世英国社会におこる修道院と一般大衆との関わりを考察した。修道院敷地内の空間構成要素とその配置につて、わが国の寺社境内の場合との建築学的比較を行い、両者の特性の明示を試み、その際にカラー写真による視覚的提示も試みた。また、ヨーロッパに源流を求め得る修道会派については、たとえば、仏グルノーブル山中のラ・グランド・シャトルーズ修道院(1084年創建)など、実見踏査の際に入手した資料に基づく分析と裏付けを行った。英国内修道院に関しては、マウンド・グレイス小修道院でニコラス・ラブ(13??〜1424)の手により成立した(c.1410)Mirror of the Blessed Life of Jesus Christの研究は世界に残存する写本約50点との比較を行いながら継続中。
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