研究概要 |
研究の手始めは、西洋古典喜劇が狂言に置き換えられるかを舞台に乗せてみることであった。この実験はローマ大学La Sapienzaの学生の協力を得て実現した。過去において、シェークスピアの「ベニスの商人」を私が翻案した「堺の商人」をイタリア語で、同じくシェークスピアの「十二夜」を新たに私が翻案した「酔っ払いの仕返し」を私が演出して、ローマにある日本文化会館のステージで4月1日、2日に上演した。同会館で4月6日に能と狂言の公演をした。 9月にオックスフォード大学で開催された古代ギリシャ喜劇をめぐる国際会議、Aristophanes Upstairs and Downstairsにおいて、「ギリシャ古代喜劇と狂言」という題で研究発表を行う。ここでも、笑いの普遍性を追及した。 実験の2段階を8月から9月にかけて行った。イタリア人学生による日本各地での公演である。出し物は、この年の2月私がローマ滞在中、翻案・演出した「酔っ払いの仕返し」。下敷きはシェークスピアの「十二夜」であるが、もともとはローマの古典喜劇が種本であるといわれている作品で、「十二夜」はブラッチアーノ公爵をもてなすためにエリザベス女王がシェークスピアに書かせたものとも言われている。もともとイタリアとは縁の深い劇である。8月19日に来日し、20日から稽古に入り、25日には田辺市の紀南文化会館、26日には和歌山市のアート・キューブ,31日には京都の国際交流会館、9月1日には越谷市のサンシティ・ホール、2日にはこしがや能楽堂、3日には東京国立能楽堂でイタリア人による私翻案・演出の「酔っ払いの仕返し」を上演した。この公演は大成功であり、笑いの万国共通性を発見する良い実験となった。イタリア人学生たちも日本語で日本の観客を笑わせたということで大いに自信を持った。 12月から1月の休みにかけて、イタリア・コメディア・デル・アルテの筋書きを基に3本、創作狂言を2本書いた。2月16日から再びローマに行き、コメディア・デル・アルテの筋書きを基にした新作狂言「恋の骨折り」を演出して、4月4,5,6日ローマ大学の中のAula Magna劇場で上演する予定である。この企画は2005 EU-Japan Festivalの一環行事として外務省欧州局に登録をしてある。 現在、日本語でこれまでの実験結果をまとめる作業をしている。これはいずれ出版を目的としている。
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