研究概要 |
今年度は、採択された「写本テクスト学の構築に向けて」と題する研究の第1年目にあたり、2005年度9月にボルドー大学で開催される「第8回国際オック語オック文学研究学会」(AIEO)で行なう発表の下準備に費やされた。すなわち、フランスの中世抒情詩でいまだマイクロフィルムのそろっていない以下の写本を、早稲田大学図書館総合閲覧課の協力を得て、ヨーロッパ各地の図書館より収集した(オック語写本:G, H, O, S, Sg;オイル語写本:B, C, F, I, K, L, N, O, P, Q, R, S, T, V, W, X, Z, a, b)。このうちイタリアのシエナ市立図書館所蔵の写本のみまだ到着していない。 これらの写本の目次と索引を、オック語作品のみならず、トルヴェールの写本まで含めて詳細に検討するのが、本課題の眼目であるが、今年度は以下のテーマで予備的な調査をほどこし、論文として発表した。まず、ペイレ・カルデナルの「寓話」と称される作品に校訂と解釈をおこない、合わせて、この作品を収録する写本での、「メタテクスト」からの検討した。つまり、どのようなタイトルでいかなる作者・作品の間にこれが書写されているかの研究を付したのである。これはバーミンガム大学のリケッツ教授への献呈論文集にフランス語で記した。続いて、大学院の文学研究科紀要において、写本によって異動の激しい抒情詩の反歌中に現れるあだ名(セニャル)についての考察を、今回到着したマイクロフィルムをも利用して行なった。
|