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2005 年度 実績報告書

唐代における悲愁の文学

研究課題

研究課題/領域番号 16520200
研究機関筑波大学

研究代表者

松本 肇  筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (40128814)

キーワード廃墟 / 休息 / 病気 / 詩人
研究概要

本年度は、賈島の文学についての研究を行った。研究成果は以下の通りである。
1、ひとつの自画像
賈島に「鷺〓」と題する詩がある。この詩はしらさぎに自己を投影した作品で、たとえくじけても望みを捨てない賈島の不屈の精神がこめられている。不屈の精神こそ、賈島の本質にほかならない。
2、廃墟の美
中唐期には、盛唐期のような雄大な気象は失われたが、新しい美意識や価値観が生まれた。そのひとつに廃墟の美の発見が挙げられる。幽静の美を愛する賈島にとって、廃墟は最も理想的な空間であり、休息に適した場所であった。「泥陽館」と題する詩は、廃墟の美を表現した賈島の代表作である。
3、病気の蝉
中唐以後、白居易の登場によって、懶と病が士大夫の人格のシンボルになった。このような文化現象の背景には、「休息」への願望があった。賈島の『病蝉」と題する詩は、中唐期における病への関心から生まれた。病気の蝉は、賈島の自画像であり、賈島は、自分を病気の蝉になぞらえて、困難な境遇の中で、己を見失わずに生きていくことのたいせつさを教えている。また、この詩には微小な世界が描かれている。微小な世界を描いた先駆者は杜甫であり、賈島は杜甫の影響を受けている。
4、詩人の生活
杜甫以後、詩を作ること自体に価値が認められるようになった。詩人として生きることが、人生の目標になった。賈島が望んだのもまた、詩人として生きていくことだった。詩作に没頭する風潮が、中晩唐に顕著になる傾向は、詩作に人生の意義を認める価値観の反映である。宋の蘇軾が、賈島の詩の特色を「痩」ということばで表現したのは、賈島が社甫のように、世界を驚かす言葉の創造者であることを指摘したものと言える。
賈島は人生の旅の終わりに、「詩人」という存在に自己の希望を見出したのだった。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2006

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 賈島の文学2006

    • 著者名/発表者名
      松本 肇
    • 雑誌名

      文芸言語研究・文芸篇 第49巻

      ページ: 35-52

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より

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公開日: 2007-04-02   更新日: 2016-04-21  

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