2004年4月から7月までは東京外国語大学視聴覚センター、国際交流基金アジアセンターでタイ映画関連の文献・デジタル資料の検索とデータベース化を行った。この間、タイ国立フィルム・アーカイブと緊密な連絡を取り、8月中旬に実施した現地調査では、ドーム・スッカウォン所長、チャリダー主任研究員の協力を得て、1980年以前と以後のタイ大衆映画の質的変容について情報収集した。さらにタイ大衆のメンタリティーや規範意識が顕著に表れている1950〜80年代の映画をアーカイブ内の撮影室で鑑賞し、タイ人研究者との問に意見交換を行った。この際、準備中のタイ映画博物館の内部を案内してもらい揺籃期以降、現代までの貴重なタイ映画関係資料の閲覧、撮影等記録を行った。また、現在、国会の特別委員会で審議中の新しい映画法について複数のドラフト法案を入手し、問題点、課題などを研究者と意見交換した。これらの資料や意見交換の成果は2005年9月発行予定の「東京外国語大学論集70号」に投稿予定である。この現地調査ではさらに50タイトル以上のタイ映画(1950〜2000年代)、映画関連書籍、映画関連雑誌のバックナンバー等を入手した。帰国後はこれらのタイ映画を時代別に鑑賞・分析し、規範意識の変容に影響を与えたと思われる大衆演劇、仏教説話、民間伝承等を抽出、理論的枠組みに関し新たな知見を得た。9月〜3月は本年度上半期に収集した内外の文献、資料、記録媒体の分析を行うと同時に、2005年2月末には2度目の現地調査を実施した。ここでは1980年代タイ映画の変容を分析する手法、フレームワークについてフィルム・アーカイブの研究員たちとの意見交換や協議を通じ必要な修正を行った。また、1950年代の貴重な映画の記録媒体の収集も行った。併せて、2005年度に実施予定のシンポジウム「タイ映画の過去、現在、未来」についてタイ人研究者への出席、協力依頼を行った。
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