先に提出した平成16年度研究計画に基づき、王三慶編『敦煌類書』に収録される類書に関して、鈔本リストを作成し、それぞれの鈔本の写真を集め、定本とすべき録文を完成させる作業に入った。昨年度の研究課題であった「童蒙書」に密接に関わる類書から作業を始め、『敦煌類書』所収の三分の一については、録文の確定を済ませている。録文確定と平行して、先行研究リストの作成中である。 各リストの作成という具体的な作業を継続するとともに、「通俗類書」の問題に入る前に「類書」とは何かという根本的な問題をあきらかにすべく、各代の図書目録における「類書」の扱いをてががりに考察した。「類書」は唐代の目録から新しい書物のジャンルを表すものとして登場したこと、唐代には後代の類書の類型がすべてそろい、類書という編集形式の発展期であったことが判明し、特に唐代の民間類書が含まれる敦煌類書が研究に不可欠な資料であることが確認された。また、「類書」の淵源、性格についても、先行研究をふまえながら考察した。なお、「類書」に関する考察は「類書について」(『お茶の水女子大学中国文学報』第24号、2005年4月刊行予定)で論じてある。 また、後代の目用類書の淵源と推測される敦煌写本「雑抄」に関して、その構成と内容の調査に着手したところであり、「雑抄」の資料と日本の類書の資料が極めて近い関係にあるという感触を得て、次年度の課題とするものである。 なお、敦煌ペリオ写本の影印本『敦煌法蔵文献』の刊行により、今年度支出を予定していた文献複写費は不用となった。
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