研究概要 |
1.原Skandapurana第32章のダクシャ祭祀の破壊神話には,Parvatiから2柱の母神,BhadrakaliとKalakarni(=Mrtyu)が出現するエピソードが含まれる.Bhadrakaliは戦闘女神タイプの美しく猛々しい女神であり,KalakarniはCamundaタイプの醜く怖ろしい女神として描かれる.一方,ヴィンディヤ山女神神話サイクルの中では,Parvatiから戦闘女神タイプのVindhyavasiniが出現し,さらにVindhyavasiniからCamundaタイプの動物・鳥の頭をもつ女神群(母神群)が出現する。この両者の比較から,(1)後者の女神神話サイクルに現れる3グループの女神は,当時既に神話上の存在であったParvatiと,民間の信仰対象であった他の2グループの女神に2大別されること,(2)後者の2グループの女神が,ダクシャ神話では並列されるのに対し,ヴィンディヤ山女神神話サイクルでは戦闘女神を上位として階層化されることが判明した.この階層化がその後の戦闘女神の最高女神化への重要な契機となった思われる.また,第171章後半のKotivarsa-Mahatmyaには,Parvatiの威力の下に男性神たちから標準的な7母神を初めとする母神群が生まれるという,現存最古の7母神誕生神話が語られる.この母神群のうち,CamundaタイプのBahumamsaは,Kotivarsaの守護女神として,前述の女神神話サイクル中の第3グループの女神(母神群)に含まれている.Bahumamsa以外の,男性神から出現した女神たちはすべて男性神の名から派生した名前をもち,いわば理論的に作られた女神たちと考えられ,ここではCamundaタイプの女神を上位として,男性神に対応する名をもつ理論的な母神群をその下位に位置づける,新たな階層化が行われている. 2.以上の成果を含めて,原Skandapuranaのヴィンディヤ山女神神話サイクルの校訂研究を中核とする,これまでの女神研究の成果を博士論文としてまとめて,グロニンゲン大学(オランダ)に提出した.
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