研究概要 |
1.原スカンダプラーナ中のヴィンディヤ山女神神話サイクル全18章のうち,未校訂であった60,61,62後半の章について校訂を行った.また,近年新たに獲得されたA系統の3写本につい,同系統の他の4写本と比較し,7写本の相互関係を確定した. 2.原スカンダプラーナ第171章後半に含まれるKotivarsa-Mahatmyaについて,Mahabharata, Harivamsaの関連部分,及び碑文資料との比較研究を行った.その結果,以下の点が明らかとなった.(1)Kotivarsa-Mahatmyaにおいて,Kotivarsa(別名Devikota等)の守護女神とみなされるBahumamsaは,Mahabharataに現れるLohita河(ブラフマプトラ河)の娘Lohitayaniを原型とする.Harivamsaに魔神バーナの都(おそらくDevikotaと同定される)の守護女神として現れるKotaviも同女神の別名と考えられる.シヴァ派及び仏教のタントラ文献では,この女神はKarnamotiという名前で知られている.(2)Mahabharataではこの女神はスカンダ神と関連付けられてはいるが,特にシヴァ信仰とは関係せず,またHarivamsaにおいては,バーナの都はシヴァ派の地とみなされているが,Kotavi女神自身がシヴァ派の女神とみなされていた形跡はみつからない.原スカンダプラーナにおいて,この女神ははじめて明確にシヴァ信仰に包摂され,シヴァとパールヴァティーの下位に位置づけられる.また,シヴァがHetukaという名で(おそらくバイラヴァの姿で)この地を守護することが,はじめて述べられる.(3)原スカンダプラーナの改訂版であるRA本及び9〜11世紀の碑文資料によると,この時期にはKotivarsaの信仰の中心は,この地の守護女神からシヴァであるHetukaに移行している.一方タントラ文献では,守護女神の信仰は重要な位置を占め続ける.以上について,10月に東京大学東洋文化研究所で開催された国際タントラ・ワークショップにて,報告を行った. 3.原スカンダプラーナの写本のうち,S2,S3,S4の3本について,マイクロフィルムのコンピュータへの画像取り込みを行った.
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