研究概要 |
1.原スカンダプラーナ中のヴィンディヤ山女神の神話サイクルのうち、未校訂であった53、54、65章を校訂した。ただし、昨年度から始めた、新しく手に入れたA7写本との校合については、すべての章について終えることができなかった。 2.デーヴィーマーハートミャ(DM)の女神神話と原スカンダプラーナ(SP)のヴィンディヤ山女神の神話サイクル,及びこの神話サイクル外の女神関連の神話を比較した結果、DMの中の第3の女神神話に、SPが大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。また、パールヴァティーからヴィンディヤ山女神が出現するエピソードの分析を中心として、SPに描かれるパールヴァティーを最高位とした女神たちの階層関係を、DMにおける戦闘女神を最高位とする階層関係にどのように変換しているかを解明した。この成果については、7月にエディンバラで開催された国際サンスクリット学会にて報告を行った。 3.以上の2項目について、8月にグロニンゲン大学インド学研究所にて、スカンダプラーナの共同研究者であるバッカー教授と共同討議を行った。 4.前年度までに行った、原スカンダプラーナに含まれるKotivarsa-Mahatmya研究に関連して、12月から1月にかけて、Kotivarsaと同定される北ベンガルのBangarh周辺にて現地調査を行った。その結果、Kotivarsaに関わるパーラ期の碑文資料およびBhairava像などのシヴァ派関係の美術資料を収集することができ、Kotivarsaがパーラ期にシヴァ派の重要な拠点であったことが判明した。一方、パーラ期以前のこの地方の女神信仰については、十分な考古学資料が存在しないことも明らかになった。この点については、今後バングラデッシュでの発掘地からの出土物の調査が必要である。
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