本研究は日本ではこれまでほとんど進められていなかった台湾現代詩研究を、「光復」期から笠詩社設立にいたるまでの時期を中心に検討することを目的とした。笠詩社とは1964年に、陳千武・林亨泰らによって設立された台湾本省人による詩社であり、詩誌『笠』(隔月刊)を刊行、現在に至っている。具体的には、主に以下の作業を行っている。 (1)台湾側が台湾文学協会理事長・林水福氏、日本側が三木を編集委員として、思潮社からの翻訳詩集「台湾現代詩人シリーズ」の出版。これは数ヵ年計画で毎年2冊を刊行するものである。三木担当としては、1年目に『暗幕の形象-陳千武詩集』、2年目に『超えられない歴史-林亨泰詩集』を出版している。 (2)2006年6月に開催された日本台湾学会(一橋大学)で台湾現代詩の分科会を企画開催した。この分科会は、三木を含めた報告者論文4篇(三木、上田哲二、阮美慧、松浦恆雄)コメンテーター論文4篇(杜國清、陳明台、山口守、池上貞子)、及び討論によって構成されている。 (3)学会での成果をもとに『現代詩手帖』2006年8月号(思潮社)において「台湾現代詩」を企画特集した。 台湾の詩人や、関連する分野の研究者の協力をえて進めることのできたこうした作業によって、日本における台湾現代詩研究はようやく出発点にたつことができたのではないかと考えている。また、「光復」期の『新生報』副刊「橋」、「現代派運動」期(50年代後半から60年代前半)の詩誌『現代詩』『創世紀』『藍星』などを主な舞台とした、外省人詩人たちと本省人詩人たちの活動全体についても、一定の研究成果がえられたと考えている。
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