現存する『牡丹亭還魂記』の版本のうち、万暦45年(1617)石林居士刻本(中国国家図書館)、万暦間刻本(中国国家図書館)、明末朱元鎮校刻本(京都大学文学部、大谷大学図書館、大阪府立中之島図書館)、万暦間文林閣刻本(京都大学文学部、台湾故宮博物院図書文献処)、泰昌元年(1620)呉興閔氏朱墨套印本(国立公文書館内閣文庫、中国国家図書館)、天啓5年(1625)梁台卿刻詞壇双艶本(中国国家図書館)、崇禎間蒲水斎校刻本(中国国家図書館、哈仏大学哈仏燕京図書館)、天啓間柳浪館刻本(台湾国家図書館)、天啓3年(1623)清暉閣批点本(京都大学文学部、中国国家図書館)、明末張弘毅著壇刻本(国立公文書館内閣文庫、哈仏大学哈仏燕京図書館)、崇禎9年(1636)独深居点定本(国立公文書館内閣文庫)、崇禎間毛氏汲古閣刻本(中国国家図書館)といった明刻本を入手、もしくは調査した。このうち、最古の版本と断定できる石林居士刻本を底本として入力し、万暦間刻本、明末朱元鎮校刻本、万暦間文林閣刻本、呉興閔氏朱墨套印本との校合を終えた。その結果、石林居士刻本、万暦間刻本、明末朱元鎮校刻本が同一系統に属し、しかも最も原初の形態を保つ版本であることが判明した。また万暦間文林閣刻本、呉興閔氏朱墨套印本はこれとは別系統の版本として行われたものであり、朱墨套印本冒頭の茅暎「題牡丹亭記」に言うように、沈〓の『増定査補南九宮十三調曲譜』に基づいて改訂が施されていることが明らかになった。 上記の作業を通じて、康煕間刊「呉呉山三婦合評本」、雍正間刊「芥子園刻本」、乾隆50年(1785)刊「氷糸館刻本」といった清刻本、乾隆57年(1792)刊の葉堂『牡丹亭全譜』、乾隆54年(1789)刊の馮起鳳『牡丹亭曲譜』といった曲譜との校合の必要性を感じているところである。新年度の課題としたい。 なお、崇禎間安雅堂刻本(北京大学図書館)については写真撮影はおろか、閲覧さえも許可されず、新年度に再度交渉したい。
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