本年度も昨年度に引き続き、『朱文公文集』巻四に収める32首の五七言絶句(作品番号146〜177)、巻五に収める32首の五七言絶句(同178〜209)の解読、関連調査、会合による討議、訳稿の作成、という一連の作業を進めた。本研究組織の構成員(研究代表者1名・研究分担者1名・研究協力者5名)が作品ごとに分担して作業を行った。訳稿の体例は、書き下し文・校異・解題(詩の内容の概要・作詩当時の作者の境遇・題材についての説明・作風上の問題点など)・通釈・語釈・補説、の各項から成る。会合は4〜10月はほぼ月1回11月からは隔週1回のペースで行い、11月末日までに上記、計63首の訳稿を完成、これに構成員による4編の関連論文を加え、冊子体<研究成果報告書>を作成して締めくくりとした。交付申請書に記したとおり、従来の朱熹研究はその思想家としての側面に集中し文学創作者としての側面は閑却されていた。しかし本研究によって、多少ともその空隙が埋められることが期待される。また、特に朱熹の絶句の内容を精査吟味することによって、朱熹の思想、とりわけその基層にある感性の特色を探るための新しい視点が提供されることになるであろう。
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